福井晴敏原作の小説「亡国のイージス」が漫画化されたもので、
映画公開に先立って週刊モーニングにて連載された。
描き手は、新人作家の横山仁(よこやま・じん)氏である。
連載中、筆力の荒々しさと、絵崩れなどによる酷評を浴びていた
面もあったが、サイトマスター自身は、これこそが福井晴敏の
原作小説に一番近い作品であったと思う。
この作品の一番の魅力は、なんと言ってもこの荒々しさだ。
いかにも劇画調で、勢いで描いているところは、どちらかと言えば
十数年前くらいの漫画によく似ているが、1コマ1コマからからほとばしる
圧倒的な熱量とパワーは、昨今の漫画作品には類を見ない。
しかも、回を重ねるごとに線がハッキリとし始め、
その成長ぶりは瞠目に値する。
かつて、週刊少年ジャンプに連載されていた「北斗の拳」や、
現在も連載が継続されている「こち亀」なども、連載開始当初の絵柄は
今とは比べものにならないくらいの荒さだったが、
両作とも漫画作品史上に名を残した名作であり、その描き手自身も
もはや知らぬもののない売れっ子作家として名を馳せている。
この横山氏も、私的にはそういった将来性を秘めた描き手であると
私は見ている。彼が漫画家として真に成熟したとき、
果たしてどれほどのパワーを発揮するのか
今現在は想像に任せるより他ないが、前述した例に見られる
大器である可能性は高い。
惜しむらくは、この作品が「第一部完」という形で一旦終了してしまい、
原作小説の世界を最後まで描き切ることが
出来なかった部分だが、この横山氏があと何作か重ねた後、
再びこの作品に着手し、亡国のイージスを最終完結させくれることを
願ってやまない。
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